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情報共有「愛知県の医療法人決算届の添付書類について」

愛知県は医療法人の決算届に付属明細書と純資産変動計算書は任意、勘定科目内訳書はお願いとして、決算届に付属明細書と純資産変動計算書の様式及び勘定科目内訳書の提出を求めています。
https://www.pref.aichi.jp/soshiki/imu/0000069455.html

当事務所は今まで愛知県に決算届を提出することがなかったのでスルーしてきましたが、令和5年から決算届を提出する必要があることから愛知県に対して決算届の添付書類を確認する質問状を提出しました。
と、いうのは任意としながらも実質的には提出を強要する自治体があったり、お願いとしながらも実質的には提出を強要する自治体があるからです。

また、決算届に付属明細書と純資産変動計算書の様式及び勘定科目内訳書の提出を求めているのは私の知る限りでは47都道府県で愛知県のみです。
医療法人制度は日本国の制度であり、愛知県単独の制度ではないのに愛知県だけ独特のローカルルールがあることに私には違和感しかありません。

ちなみに厚生労働省は全国の医政関係の責任者を集めて説明する全国医政関係主管課長会議を毎年開催しています。当然愛知県もこの会議に出席しているはずです。
そして、令和3年度全国医政関係主管課長会議の資料の「医療法人制度について」には「医療法人については、非営利性の確保をはじめ適正に運営されていることが基本となるので、医療法、医療法施行規則及び運営管理指導要綱等の関係通知に基づき、十分な指導監督をお願いする。」と書かれています。
つまり、厚生労働省は医療法人について法令と通知に基づいて指導監督を行うよう指導しており、法令はもとより通知にも基づかない愛知県独特のローカルルールである付属明細書と純資産変動計算書の様式及び勘定科目内訳書を求めるのは不適切だと思われます。

さらに令和3年度全国医政関係主管課長会議の資料の「医療法人の事業報告等の届出事務・閲覧事務のデジタル化について」には(G-MIS(ジーミス)による)「手続きのデジタル化によって、医療法人と都道府県における事務負担の軽減に資するものと考えているため、御理解と御協力をお願いしたい。」となっていますが、付属明細書と純資産変動計算書の様式及び勘定科目内訳書の提出は医療法人の事務負担の軽減どころか、明らかに事務負担増となっており、厚生労働省の方針に反していると思われます。

これらのことから愛知県に対して決算届と一緒に提出を求められている付属明細書と純資産変動計算書の様式及び勘定科目内訳書は本当に任意なのか、それとも実施的には提出を強要されるものなのか質問しました。

その回答が令和5年1月5日に愛知県医務課医療指導グループ医療法人担当から下記のように回答がありましたので、情報を共有するために当事務所のウェブサイトで公開致します。

あくまで任意であり、提出しないからとって催促はしない。ただ提出がない時は提出漏れかもしれないので電話で確認をする。提出時に送り状等に「提出しない」旨が書いてあり提出漏れでないことが確認できるのであれば電話もしない。また、提出が無いからといって不利益な扱いはしない。

当事務所としては愛知県以外の46都道府県と同様に法令で定められた決算届のみを愛知県にも提出する方針です。
愛知県独特のローカルルールの添付書類を提出するかどうかは皆様のご判断にお任せ致しますが、ローカルルールを認める行為をすればするほど、愛知県独特のローカルルールがどんどん増える可能性があります。
また、愛知県独特のローカルルールの添付書類を提出することは依頼主である医療法人の利益を守る行為ではなく、愛知県独特のローカルルールを追認するだけの行為だと私は考えています。
誰から仕事の依頼を受けていて、誰の利益を守る行為をすべきなのかよく考えて業務を行うべきではないでしょうか?

最後に愛知県行政手続条例第30条(行政指導の一般原則)において下記のように定められているので任意提出書類である付属明細書と純資産変動計算書の様式及び勘定科目内訳書の提出が無いことで不利益な扱いをすることはそもそも条例違反ということを念のため書いておきます。

愛知県行政手続条例第30条

行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、いやしくも当該県の機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならないこと及び行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意しなければならない。
2 行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。

(公開日 令和5年1月10日)

上記の通り、当事務所は愛知県に医療法人決算届を提出する時は、他の46都道府県と同様に法令で定められた決算届のみを提出してきましたが、令和5年6月以降は愛知県も5つの項目からなるチェック項目のすべてに当てはまらない時は勘定科目内訳書の提出は不要となりました。
これで本来あるべき医療行政に一歩近づいたと言えます。
愛知県にはまだまだ問題点がありますが、顧問先様である医療機関を守るためにも、法的根拠のないローカルルールについては行政のいいなりになるのではなく、医療行政を本来の正しい方向に導くよう努力することもプロである行政書士の仕事だと思っています。

(追記 令和6年1月23日)

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