経営ヒント「歯科クリニック新規開業にあたってのアドバイス」

ホームページ開設以来、歯科クリニック新規開業についてのご相談を数件頂きました。
歯科クリニックは現在開業数が多く、競争が厳しくなっている事は周知の事と思います。よく歯科クリニックの経営に大切な事として、患者ニーズを的確につかむこと、自院の診療スタイルを持つこと、技術を磨くこと等が言われています。
もちろん新規開業にあたり、どのような診療スタイルでいくかを決めることは非常に大切な事ですし、患者アンケート等で近隣患者のニーズをつかむことも大切です。
しかし当事務所では、それ以外にも初期投下費用を出来るだけ抑える事をお勧めしています。

なぜならば1歯科クリニック当たりの平均患者数は年々減少傾向にあり、現在は20人未満となっています。(厚生労働省の統計より)その全てが自費診療であればいいでしょうが、実際には保険診療が8割以上をしめています。保険診療は決められた保険点数に基づいて請求しますので、多額な初期投下費用をかけても、かけなくても収入は一緒です。そうであれば初期投下費用は少ないにこした事はありません。
歯科クリニックの開業で必要な主な初期投下費用は、テナント賃貸に関する権利金等、内装工事代、治療用ユニット、レントゲン等の医療器具代、レセコン等だと思います。
当事務所の今までの経験では特に内装工事代が高くかかっています。今まで不動産屋や建設会社と交渉をあまりした事が無い先生では無理もないと思いますが、いわゆる「ぼられて」いる場合が多いようです。この対処方法としては建設・不動産業界に詳しく信頼のおける者に仲介を依頼するのが一番ですが、そのような方を見つける方が大変かもしれません。
次に医療器具ですが、私は中古品を使う事も検討するよう勧めています。中古品といってもちょっとだけ型が古いだけで十分今でも使えるものがあり、中には新古品と言われる新品同様のものもあります。当事務所の場合、某大手リース会社より物の良い中古品を紹介してもらっているという事もあり、特に勧めています。
レセコンについては診療報酬改定もありますので、中古品は使えませんが、数社から見積を取ることで良いものをなるべく安く手に入れるようにした方がいいでしょう。

ひとつ当事務所で実際にあった例を紹介します。これは東京都内で開業間近の歯科クリニックからの相談事例です。
その歯科クリニックは歯科開業支援業務を行っているという某コンサルタントが開業前より関わっていたのですが、話を聞いてびっくりしました。びっくりしたのは内装工事代、治療用ユニットの数、レセコンについてです。
まず内装工事代がかなり多額だったので、どこで工事したのか聞きましたら某コンサルタントが全て手配したとの事でした。次に治療用ユニット数です。なんと4台もあるのです。某コンサルタントの説明では、開業後患者が増えてから診療をしやすくする為と自費用と保険用とで台を分ける為だそうですが、そんな事は実際に患者が増えてから台数を増やせばよく、また自費の患者が多く来るとわかってからで十分間に合う問題だと思います。どうやら治療用ユニットも某コンサルタントが購入先を決めたようです。
さらにレセコンですが、ちょっと古いタイプのレセコンが入っていました。具体的にはウィンドウズ上で起動していますが、実際はオフコンのシステムを利用しているものです。そしてその為にパソコン1台がレセコンだけにしか使えない状態になっており、わざわざもう1台パソコンを購入しているのです。このレセコンも某コンサルタントが決めたそうです。
今回の例では間違いなく初期投下費用がかかりすぎています。また、増えるであろう患者数を元に設備を用意している事も問題だと思います。特に新規開業の場合は、開業後にすぐに患者が来るわけではないので、希望的観測でユニット数を決めるべきでは無いと思います。
初期投下費用のほとんどを借入金でまかなっており、某コンサルタントは自慢げに銀行との交渉も自分が行ったと言っていますが、これも大きな間違いだと思います。借り入れできる金額で借りるのではなく、無理なく返せる金額を借りることが大切だと思います。
これはあくまで憶測ですが、某コンサルタントが建設会社・医療機器会社・コンピューター会社からリベートをもらっているのではないかと思います。
結局この歯科クリニックは当事務所と顧問契約を結ぶことなく開業しておりますので、その後どうなったかはわかりませんが、患者が予定通り来ている事を祈っております。

初期投下費用のほとんどを自己資金でまかなえる方であれば、予算を気にせず豪華な設備にしてもいいでしょう。その方が自費の患者が来やすいかもしれません。ただしほとんどが借入金の場合には、なるべく初期投下費用を少なくすべきです。(リースも同様です)
開業後、患者が順調に伸びる場合には借入金が若干多くても問題にならない事が多いですが、そうでない場合は借入金返済は資金繰り上大きなウエイトを占めてきます。
そうなってからでは借入金を減らすことが出来ない事をよく考えて、初期投下費用を決める事をお勧めします。

(公開日 平成16年12月以前)