質問「医療法人の理事の営利法人の役員兼務について」

医療法人の理事長や理事であっても有限会社や株式会社等の営利法人の役員を兼務出来ます。
医療法第45条には医療法人の役員になれない者として下記の3つを挙げています。
1.成年被後見人又は被保佐人
2.医療法、医師法、その他の法令の規定により罰金以上の刑に処せられてから2年を経過しない者
3.その他禁錮以上の刑に処せられた者
上記を見ると他の法人の役員とは書いてありません。つまり医療法人の役員は他の法人の役員を兼務していいと言うことです。現に医療法人の理事長が医師会の理事になったり、他の法人の理事になったりしています。

ただしその医療法人と何らかの取引をする法人(MS法人)の役員を兼務する場合には注意が必要です。
特に理事長がMS法人の代表取締役を兼務する場合、利害関係が一致する事になり医療法第54条にある剰余金分配禁止に抵触する恐れがありますし、何か取引する際には、いちいち特別代理人を選任しなければならないので非常に面倒です。
その為、理事長はMS法人の代表取締役にはなれません。(法的に駄目とは明言されていませんが、法律論としては駄目であるとされています)
ちなみに特別代理人について簡単に説明しておきます。
医療法第68条において、医療法人については民法の規定を準用する書いてあり、民法には法人と利益が相反する行為を行う時には、都道府県知事に対して特別代理人を選任する事が必要であると定められています。
ですから理事長と営利法人の代表取締役が同一人物の場合には特別代理人を選任しなければならず、いちいち面倒という事になります。
ただし理事長と営利法人の取締役又は理事と営利法人の代表取締役が同一人物の場合には特別代理人を選任する必要がありません。

次に理事の場合ですが、理事はMS法人であっても代表取締役又は取締役を兼務することが出来ます。
しかし医療法人設立認可申請など都道府県に対して何らかの認可申請する時に、理事がMS法人の役員を兼務していると、いろいろと面倒な事になることが多いです。
例えば建物の賃貸借をしている時は近隣相場との家賃の比較が必要であったり、MS法人の登記簿謄本等を添付しなければならなかったり、県によっては念書を書かされたケースもありました。
理事がMS法人の役員を兼務している場合の対応は各都道府県で違いますが、少なくとも医療法人設立時には、設立しようとする医療法人の理事がMS法人の役員を兼務していない方が、スムーズに認可を受けやすいようです。

(公開日 平成16年12月以前)


この回答に対して、医業経営コンサルタントをしている方よりご質問がありました。ご質問の内容は「医療法人運営管理指導要綱」の中に医療法人の役員の欠格事由として「医療法人と関係のある特定の営利法人の役員が理事長に就任したり、役員として参画していることは、非営利性という観点から適当でないこと」と書かれている点について、当事務所がどう考えているかというものでした。
これについての当事務所の見解は下記の2点に集約出来ます。
1.上記要綱は一人医師医療法人は対象外であると明確に書かれているので、一人医師医療法人については全く問題にならない事。
2.病院又は老人保健施設を持つ医療法人については上記要綱は確かに適用されるが、「非営利性という観点から適当でない」と書かれているだけで、一切認められないとは書かれておらず、従って他に適当な者がいないのであれば兼務は認められると解釈できる事。(現に兼務を認めてもらった例があります)

結局、もし法律論としてどうかと聞かれるのであれば黒でも白でもないグレーであるとしかお答えできず、実務上どうかと聞かれるのであればやり方次第とお答えできると思います。
ですから上記回答にも兼務出来ると書きました。当事務所は顧問先様の立場に立ってコンサルタントをしている為、行政庁の立場にいる方若しくは行政庁の立場から考えている方とは見解の相違があると思いますが、その点はご了承下さい。