質問「適格年金から長期平準定期保険への移行について」

ご相談内容は現在適格年金に加入しているが(加入者数約150名との事です)、某生命保険会社から適年の移行先として100歳満了の長期平準定期保険を検討して欲しいと言われており、他からは中退共に移行した方が良いと言われ悩んでいる、といったものでした。

まず簡単に100歳満了の長期平準定期保険についてご説明しておきます。この保険は被保険者が100歳になるまで保険期間がある定期保険です。定期保険ですから終身保険や養老保険と違い満期保険金はありませんが、その変わり解約返戻金が高いという特徴があります。解約返戻金は加入年数によって違いますが、ピーク時は90%位になると思います。
支払った保険料は保険期間の60%まで1/2しか損金にはならず、残りは前払金として資産計上しなければなりません。ただし資産計上した前払金は保険期間の残り40%で損金とする事が出来ます。
退職金プランを長期平準定期保険にする事のメリットは下記のようなものがあります。
1.解約返戻金は法人に戻るので、解雇した職員等に退職金を支払わなくて済む
2.法的な制度ではないので、退職以外の事由で解約が出来る
3.被保険者が死亡した時は死亡保険金が支払われるので、福利厚生も兼ねる事ができる

以下、ご質問に対する回答です。

まず中退共との違いを説明しますと、適格年金から長期平準定期保険に移行する場合には、今まで適格年金で積み立てられてきた積立金を職員に分配しなければならず、その金額が50万円を超えてしまうと、一時所得として所得税が課税されてしまいます。(中退共も適格年金積立金のうち中退共へ引き継げなかった差額は一時所得として所得税の課税対象となりますが、平成17年4月より引き継げる範囲が広がるため一時所得として課税される人はかなり少なくなると思われます。)
また、中退共は国の退職金制度ですから、退職以外の事由で給付が行われる事はありませんし、法人に戻る事もありません。その変わり掛金は全額損金になりますし、退職金も掛金相当額を上回ります。(ただし中退共への加入期間が2年以下の場合掛金相当額を下回ります)

上記のように長期平準定期保険と中退共では基本的に性格が異なりますので、どちらのプランにするかは、ご相談者様がどのような目的で毎月掛金を支払っているのかで変わります。
例えば、あくまで退職金の原資と考え、また退職時の追加拠出や事務処理も無くしたいというのであれば中退共を検討すればいいと思います。
一方、退職金の原資としてだけでなく自由に使いたいと考えたり、福利厚生も兼ねたいと思うのであれば長期平準定期保険を検討するのもいいと思います。
しかしもし長期平準定期保険を検討されるのであれば、別の保険商品も検討した方がいいでしょう。何故かと言うと長期平準定期保険はピーク時の解約返戻率は高いですが、1/2しか損金にならない事と、解約返戻率はピークを境にだんだん下がっていくからです。これらの事を考えると「がん保険」等別の保険商品も検討すべきだと思います。

しかし今回は全くの新規で加入するのではなく、適格年金からの移行という事を考えますと、長期平準定期保険はどうかと思います。
理由の第一は適格年金での積立金が職員に戻る事になりますので、今まで退職金の為に積み立ててきた意味が無くなってしまうという事です。元々の退職金の意味を考えると在職中に支給するのはどうかと思います。
また、職員が約150名いるのであれば、一時所得として所得税が課税される人が相当数出てくるはずです。
次に長期平準定期保険では解約返戻率はピークでも90%程度しか無いという事です。つまり掛金は自然と目減りしていくのです。適格年金の制度が無くなる理由の一つは、当初の予定利率で運用できず逆に積立金が目減りする事があるからだと思いますが、適格年金では現在でも約1%程度の運用は出来ています。(事務費として1%程度は引かれますが)少なくともマイナス10%という数字はありません。
これは生命保険会社に言わせると死亡保険金というプラスがありますし、納税額を考慮した実質解約返戻率は100%以上だという事になりますが、確かに死亡保険金はプラスですが、納税額を考慮した実質解約返戻率と言うのであれば中退共は140%位になります。
ですから単純に考えても、適格年金と同じ退職金規程で定年時の予想退職金額を目途に、毎月の保険料を算出すると、絶対に長期平準定期保険の方が適格年金より高くなります。もし某生命保険会社が提案している保険料が現在の適格年金の掛金より安い場合は、よく内容を確認して下さい。恐らく定年時の予想退職金額の70%程度を想定して計算していると思われます。
また生命保険会社によっては配当金があるので解約返戻金自体100%近くなると言っている所もあるようですが、配当率は約束されたものではなく、保険のパンフレット等を見るとちゃんと「支払いを約束するものではない」と書かれているはずです。つまり適格年金でいう5.5%という予定利率が守られていないのと同じです。

今までの内容を読まれると長期平準定期保険ではなく、中退共にするべきだと言っているように思われるかもしれませんが、ご相談者様の経営状況や適格年金の運用状況を知っている訳では無いため、一般的な話と考えて頂きたいと思います。
実際にはその法人の経営状況等によっては中退共ではなく長期平準定期保険、又は他の退職金プランが適当な場合もありますので、よくご検討下さい。

(公開日 平成16年12月以前)