経営ヒント「クリニックの新規開業(外科、内科系クリニック編)」

クリニック(診療所)の開業を検討されている先生はたくさんいらっしゃると思います。現に当事務所にも開業に関するご相談がよくあります。
ご相談を受けた内容で多いのは、開業形態についてです。開業形態にはテナント開業、クリニックモールでの開業、開業中若しくは開業していたクリニックでの開業(承継開業)等いろいろありますが、そのうちどのスタイルで開業した方が良いか?とか賃貸と購入どちらがいいか?といったご相談が多いです。
そこで開業形態別にそのメリット・デメリットをまとめてみました。

1.テナント開業
テナント開業のメリットはなんと言っても駅前や繁華街など人通りが多いところで開業できる事だと思います。戸建開業ではなかなか人通りの多い場所を確保出来ませんし、仮に出来たとしても相当賃料が高くなると思います。その反面駐車場の確保が難しいと言えます。ただしテナントビル自体に駐車場がついていたり、近くのパーキングと契約する等の方法で確保することは出来ます。
テナント開業の場合の一番のデメリットは事業を拡張しづらい事だと思います。借りたスペースは決まっていますので、仮にデイケアをしたいと思っても出来ません。この点戸建開業だと増改築等の方法でスペースを確保出来たり、近隣土地を購入する事で広いスペースを確保する事が出来ます。また、患者さんが多くなってきても待合室を広げる事も出来ませんし、職員が多くなってくると休憩室等の確保も難しくなってきます。
通常、テナント開業の場合は賃貸が一般的ですので、賃貸と購入で悩むことは少ないと思われますし、先ほど書いたように事業を拡張しづらく、その為にわざわざ別の場所に移転された先生もいますので、賃貸が適していると言えると思います。

2.戸建開業
戸建開業のメリットはスペースを広く確保出来る事と、駐車場の確保が比較的容易という事だと思います。また2階に居住スペースがついている物件が多いため、自宅にしたり職員の休憩所にしたりする事が出来ます。スペースが広いため、CT等広いスペースを必要とする医療機器を置けるというメリットもあります。
戸建開業の場合のデメリットはテナント開業と違い人通りの多い場所を確保出来ない事だと思います。物件によってはかなり入り組んだ住宅地にありますので、こまめに看板を出すなどしてクリニックの場所をアピールしないといけない場合もあります。また、物件そのものが築後相当年数を経っているものもあるため、玄関が狭い、バリアフリーになっていない、待合室が狭い等、使い勝手が悪い物件もあります。
戸建開業の場合は、賃貸だけでなく購入できる物件も多いです。開業資金に余裕があれば購入するという事も考えられると思いますが、購入するとなかなか別の場所に移りづらいですので、初めて開業される場合は賃貸をお勧めします。

3.クリニックモールでの開業
クリニックモールでの開業は基本的にテナント開業と同じメリットとデメリットがあります。ただしクリニックモールならではのメリットとしては、患者さんが集まりやすいという事や、元々クリニック用に設計されているので余計な内装工事代がかからない等初期投資額が少なく済む場合が多いという事だと思います。
最近はテレビでもクリニックモールが取りあげられたりとブームのようになっている気配もありますが、デメリットもあります。まず患者さんは確かに集まりやすいですが、逆に集まった患者さんを同じモールに入っているクリニック同士で取り合うという事です。同じ診療科がいなければいいと思うかもいれませんが、内科、耳鼻科、小児科等はブッキングしますし、外科だって本来は風邪等の患者さんが来るはずが他の内科に取られるといった現象が出てきます。クリニックモールでの開業を考えられている先生は必ず一緒に入る診療科をチェックして下さい。またクリニックモールの場合、各クリニックが非常に近いスペースにある訳ですから、その分やりづらい所が出てきます。よく隣家同士が些細なことで喧嘩したというニュースを聞くと思いますが、クリニックモールに入っている先生に聞くとそれと同じような事があるらしいです。

4.承継開業
承継開業の場合、2つのパターンが考えられます。一つは開業中の物件であり、もう一つは以前開業していた物件です。開業中の物件はM&A(病院売買)と同じだと考えて頂きたいと思います。つまり何らかの事情でそのクリニックを手放すのですから、手放す理由がなんなのかよく把握してから決められる事をお勧めします。ただし仮に経営不振で手放す物件であっても医業の場合、経営不振の理由が本業(医業)によるものではなく、不動産投資等により生じた不良債権が原因である場合が多いため、余程悪評がたっているクリニックでない限り、開業中の物件による承継開業はスムーズにいく場合が多いと思われます。
次に以前開業していた物件ですが、前の先生が廃業してからどの程度経っているかで変わってきます。1年近く廃業していると間違いなく患者さんは他のクリニックへ移っていますので、開業してもすぐには元に戻ってくれません。しかし、そうは言っても長年開業していたクリニックであれば、地元の方達はクリニックがあるという事をよく覚えていますので、開業した事を知らせさえすれば案外戻ってくるケースが多いようです。
以上の事からメリットは開業後、比較的経営がスムーズにいきやすいという事と、ある程度医療機器が揃っているという事です。(古いものが多いようですが・・・)
デメリットは賃料が高めであるという事と、建物自体が古いものが多いという事が言えると思います。また物件によっては様々な理由(例えば息子が医学部に通っている等)により、賃貸借期間を5年ないし10年程度しか認めないといったケースもあります。
承継開業の場合も戸建開業と同じく、初めて開業される場合は賃貸をお勧めします。

5.M&Aによる開業
これから開業しようと考えられている先生の場合、間違いなくベットを持つことができません。ただしそれは新規に開業した場合の話です。M&A(病院売買)ならベットを持つことが可能です。
ですからM&Aによる開業のメリットは、すばりベットが持てる事です。そしてデメリットは多額の資金を必要とする事です。買収額はベット数や対象病院の経営状態によりますが、間違いなく億以上になると思われます。ですから初めて開業される方というよりは既に開業されており、資金的にも余裕があり、職員の扱い方も慣れている先生が検討されるべきだと思います。
なお、いわゆる悪徳ブローカーは現存しますので、M&Aをお考えの方は仲介に入る人をよく見極めて下さい。病院のM&Aは不動産取引のように法律でルールが決められていません。その為ちゃんとした知識を持って対処しないと、いくらでも騙されてしまいます。ご注意下さい。

以上、簡単ではありますが、開業形態別のメリット・デメリットについてまとめてみました。なお、上記に書いた事は当事務所での経験上の事を書いただけですので、必ずしも上記に書いている事が合っているとは言えません。あくまでもご参考としてお読み下さい。

(公開日 平成16年12月以前)