質問「産婦人科クリニックの経営について」
今回は10床規模のお産を取り扱っている産婦人科クリニックから今後の経営についてのご相談を頂きました。現在の一ヶ月あたりの分娩数は10くらいと経営的に厳しい状況にあり、これからどうしたらいいかという内容でした。
分娩数が10程度であっても職員数は10名前後いるはずであり、職員の人件費だけでも月に250万から300万円程度かかるはずです。これだけみても経営が厳しいことがわかります。
その為お産を取り扱う産婦人科の損益分岐点は一ヶ月の分娩数が20前後ではないかと思います。
ご相談を受けたクリニックではここ数年間ずっと一ヶ月の分娩数が10前後で推移しているとの事ですので、今後お産を続けるのか、お産をやめて無床クリニックとして出直すのかの決断を早めにするべきだと思います。
最近のお産を取り扱う産婦人科クリニックにおける経営のキーワードとしては下記の事があげられます。
1.完全個室化する。最近ではさらに進んでLDRを導入し、周りを気にせず家族と一緒にリラックスして出産できるようにしているクリニックもあります。 (LDRとは、陣痛・回復期・分娩期全て同じベットで過ごすシステムの事で、部屋を移動する事なく自宅に近い雰囲気で出産できると言われています。)
2.助産婦外来を設け、妊婦さんが気軽に話をでき、出産に対する不安を取り除くようにする。
3.母乳教室、エアロビクス教室、退院後の助産師や栄養士によるアフターケア教室などを設け、出産後のアフターケアを充実する。
4.入院施設を近代化し清潔感を持たせる。等
一方、無床クリニック化するのであれば次のような風潮があります。
1.高齢化社会を反映した閉経後のケア、更年期障害、骨粗しょう症、尿失禁等を行う婦人科に特化する。
2.アンチエイジング外来(抗老化、抗加齢)を行う。併せてフォトフェイシャル等の形成外科的施術も行う。
3.不妊治療専門外来とする。等
今後のクリニックをどうするかは開設者である先生が決めることであり、例えば上記の例の中から先生の診療方針に沿うものがあれば、それを取り入れればいいと思います。
ただし最も大切な事は今後のクリニック経営において何が自院の売りなのかという事を明確にし、それに沿った広告・広報戦略を行うという事です。いくら先生がポリシーを持って診察していたとしてもそれを患者が知らないと何の意味もありません。また広告や広報とは元来他院との差別化をアピールするものであり、ただ単にクリニック名と住所・電話番号を書けばいいというものでは無いと思います。
中には来院する患者のほとんどが口コミによるものであり、看板等の広告を出すことは経費の無駄使いとばかりに一切広告を出していないクリニックもあるようですが、どの地方でも最近マンションが多数新築されるなど元々その地域に住んでいなかった方が多くなってきています。そういった方達に口コミは期待出来づらいと思います。
また日頃ちゃんと広告・広報活動をしている所とそうでない所は長期的にみれば確実に差が出ることになります。特に産科は2003年の合計特殊出生率が1.29という少子化社会の中、クリニックの質が問われていますのでなおさらです。
(公開日 平成17年2月9日)