質問「広域医療法人による分院の管理について」
ご質問は某県において歯科を開業されている先生から頂きました。分院を他県にまたがり数院を持たれているそうですが、全て分院の院長が開設者となった個人開業というスタイルをとっており、MS法人を介した間接管理という形態になっているとの事です。ちなみに本院は既に医療法人化されているそうです。
ご質問の内容は広域医療法人にするのは大変かという事と、分院の管理方法についてでした。
広域医療法人とはあくまで俗称であり、たまたま分院を出すのが他県であるというだけの事です。ですから既に本院が医療法人化しているのであれば分院開設に関する定款認可申請を出すことが、すなわち広域医療法人を作るということになります。
また広域医療法人になっても基本的に今までと変わることはありません。よく主務官庁が厚生労働大臣となるので大変になるのでは?というご質問を頂きますが、なんて事はありません。ただ単に今まで県に提出していた書類を2部提出するだけです。つまり主務官庁が厚生労働大臣になっても実質は今まで通り本院が所在する県が主務官庁となります。
ですから広域医療法人にするのは大変ですか?というご質問は簡単ということになります。
次に分院の管理方法についてですが、分院の管理で一番難しいのは分院のスタッフ(特に院長)が本院に管理されている事のインセンティブを感じられるかどうかだと思います。
分院開業当初はまだ院長もスタッフも初めての連続ですから案外スムーズに行きますが、開業後数年も経ちますと自分達で出来ると自信を持ち始めます。この傾向は分院が本院から離れている等で衛生士や受付事務等の人材の管理から日々の経理まで見させている分院程強いようです。
特に歯科は比較的開業しやすい科ですから、院長の気持ちが独立開業の方に少しでも向き始めますと本院との間に軋轢が生じやすくなります。
ですから如何に本院が管理する事のインセンティブ得るかが、分院管理の重要なポイントとなります。
このように考えると広域医療法人として分院を管理するのは形式的にはいい方法ですが、広域医療法人とするだけでは本院に管理されるというインセンティブは得られませんので、本院と分院の軋轢がなくなるとは考えにくいと思います。
実際に分院を上手に管理している医療機関を見ますと、本部を設けてそこで人事管理や医薬品・備品等の管理をしたりする事で本院に管理されるている事のインセンティブを作っています。また本院の名称自体が非常に有名な所はフランチャイズ形式での事業展開をしています。
つまり分院の管理方法は千差万別ですので、まずは本院に管理される事のインセンティブをどこで得られるのかを検討するのが先決で、その後形式的な分院の在り方を検討すべきです。ですから広域医療法人にするかどうかもその時に考えればいいと思います。
(公開日 平成17年3月18日)