質問「2007年4月以降の新しい医療法人制度について」

ご質問は平成18年度医療法改正で平成19年4月(2007年4月)以降の医療法人制度が変わるが、以前は出資額限度法人になると聞いていたのに、最近になって基金拠出型法人になると言われている。いったいどうなっているのか?というものでした。

つい最近まで医療経営誌やセミナー等で多くの人が出資額限度法人になると言い続けていましたから、ご質問された方のように混乱されている方は多いと思います。
ただ、基金拠出型法人も厚生労働省の考えでは基金の払戻は出資(拠出)額を限度としていますので、出資額限度法人と言えなくはありません。
しかし、今まで言われ続けてきた出資額限度法人は明らかに出資持分のある社団法人を指しており、基金拠出型法人とは別物です。

話はすこしそれますが、私は当初より出資額限度法人にはならないと言い続けてきました。理由は出資額限度法人は出資持分がある社団法人を前提としているからです。そもそも医療法人制度改革が必要とされてきた主な理由は、医療法人の出資持分に対する相続税課税の問題と、退社した社員による出資持分払戻請求の問題です。
私はこれら2つの問題は出資持分のある社団法人を前提としている限り解決できないと指摘してきました。詳しくは当事務所が発行している医業経営情報のNO.38「医療法人制度改革の行方」をご覧下さい。

話を元に戻します。基金拠出額法人は出資持分のない社団法人です。厚生労働省は平成17年より「非営利性を徹底した持分なしの医療法人」にすると方向性を示していたので、平成19年4月以降に設立される法人はもともと基金拠出型法人を前提としていたと言えます。
ところで、医療法人とは社団法人か財団法人のどちらかになりますが、一般的に社団法人や財団法人は公益法人と呼ばれます。公益法人は、公益性に関する事業を行うこと、営利を目的としないこと、主務官庁の許可を得ることが必要で、まさに医療法人と同じです。
この公益法人は平成18年5月26日に公益法人制度改革が国会で成立し、簡単に設立できる「一般社団法人」と公益性の高い「公益財団法人」の2階建て構造になりました。(ちなみに医療法人制度改革は6月14日に国会で成立し、基金拠出型法人と公益性の高い社会医療法人の2階建てになる予定です。)
公益法人制度改革で新たにできた一般社団法人は主務官庁の許可を必要とせず登記だけで設立が可能で、設立時の財産保有規則もありません。したがって基金という拠出も必要ありません。
しかし、医療法人は医療法に基づいて設立される法人であり、医療法第44条に「都道府県の認可を受けなければ、これを設立することができない。」と書かれている限り登記だけで設立はできません。また、医療法第41条に「医療法人は、その業務を行うに必要な資産を有しなければならない。」と書かれている限り設立時の財産保有規制があり、基金を拠出しないと設立認可が受けられません。
ですから、設立時の基金の拠出が絶対必要なので、基金拠出型法人と呼ばれるのです。

基金は資本金と違います。「一定の目的のために積み立て、または準備しておく資金」(広辞苑より)で、金銭消費貸借のように社団法人は基金の拠出者へ返還義務があります。(ただし利息はつきません。)ところが社団法人では借入金として負債計上するのではなく資本金と同じように資本計上します。また、基金を拠出したからといって社員になれる訳ではありません。つまり基金の拠出と社員の地位は無関係です。
基金拠出型法人と同じ基金制度を持つ法人に有限責任中間法人があります。この有限責任中間法人は平成14年4月から施行されていますが、未だ基金の税法上の評価がはっきりしていません。
しかし、基金拠出型法人は、配当が禁止されている事、解散時の残余財産は医療法で国・地方自治体等に限定されている事、社員退社時の基金の払戻は拠出額を限度とする事などを考慮すると、払込済出資(拠出)額による評価になるのが妥当と思います。
もし払込済出資(拠出)額による評価になれば出資額限度法人のように社員や理事の同族要件は関係なく相続税課税の問題も、出資持分払戻請求の問題も解決できます。

以上、ご説明してきたように出資額限度法人と基金拠出型法人は全く違う法人です。そして平成19年4月以降の新しい医療法人制度は基金拠出型法人となり、出資額限度法人は既存の出資持分のある社団法人のひとつの形態として残り続けると思います。

(公開日 平成18年8月31日)