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質問「管理者の常勤の意味について」

ご質問は、ある医療法人の分院(クリニック)に保健所による立入検査があった際に、その分院長(管理者)の一ヶ月平均の出勤日が14日と、分院の一ヶ月平均の診療日である22日に達していないので、医療法第15条の監督義務を果たしていないので管理者には不的確だと指導されたが、本当に診療日の全てを出ないと常勤ではないのか?という内容でした。

医療法第15条には「病院又は診療所の管理者は、その病院又は診療所に勤務する医師、歯科医師、薬剤師その他の従業者を監督し、その業務遂行に欠けるところのないよう必要な注意をしなければならない。」と定めており、常勤云々という事は書かれていません。
しかし、管理者について少し詳しく書いてある通知に「管理者の常勤しない診療所の開設について」があります。
この通知には「管理者は、当該病院又は診療所における管理の法律上の責任者であるから、原則として診療時間中当該病院又は診療所に常勤すべきことは当然であり」と書かれています。
ですから、管理者は常勤の必要があります。
もしかすると保健所職員はこの通知を根拠に診療日全てに出勤する必要があると言ったのかもしれません。

では、診療日全てに出勤しなければ常勤にならないかと言うとそうではありません。
医療法第25条第1項の規定に基づく立入検査要綱に常勤医師等の取扱いについてという別紙があります。そこには常勤医師の定義として「病院で定めた医師の1週間の勤務時間が、32時間未満の場合は、32時間以上勤務している医師を常勤医師とし、その他は非常勤医師として常勤換算する。」と書かれています。
つまり雇用契約書で出勤日数などを明確に定めていなければ、一ヶ月平均17日以上出勤していれば常勤医師となります。

しかし、今回のケースは平均出勤日が14日と週平均3.3日しか出ていませんので、指導の対象になったと思われます。
ですから指導に対しては、分院長が一ヶ月平均17日以上出勤するよう改善する旨の念書などを差し入れる等の対処をされるのが良いと思います。

(公開日 平成18年11月8日)

管理者の常勤については質問が多いので、補足説明を致します。
私が実際に某政令指定都市で経験したことですが、某市もやはり管理者は常勤でなければならないと指導してきました。
根拠は前述した「管理者の常勤しない診療所の開設について」です。
しかし、この通達は昭和29年と相当前に出された通達です。
当時は医師会の力が強かったので診療所の診察日は週5日以内だったでしょうし、診療時間も1日8時間を超えることはなかったと思います。
ところが現在は365日診察する診療所や、1日12時間以上診察している診療所もあります。
つまり、昭和29年とは随分と状況が変わってきています。
その上、上記通達は非医師(具体的にはエックス線技師)が付近の病院の勤務医を管理者としてレントゲン診療所の開設許可を願い出たことに対する回答です。
医師又は歯科医師本人が開設・管理者となる事例ではありません。
このように昭和29年の通達に書かれているからと言って、全ての診療所の管理者が診療時間中常勤でなければならないと指導するのは無理がありすぎです。

ですから私は某政令指定都市に対して医療法第25条第1項の規定に基づく立入検査要綱に基づく常勤医師の定義を満たしているのであれば管理者として不的確ではないと主張しました。
これに対する某市の回答がすごい。
医療法第25条第1項の規定に基づく立入検査要綱は病院について書かれているので診療所には当てはまらないというのです。
確かに立入検査要綱は病院を前提に書かれています。
しかし、保健所は診療所に対する立入検査の時にこの要綱を書かれていることを根拠に指導をしたことが無いというのでしょうか?
また、立入検査要綱に診療所と書かれていないと屁理屈のようなことを言い出すのであれば、昭和29年の通達には「当該病院又は診療所に常勤すべきことは当然」と書かれている以上、病院の管理者についても365日ずっと常勤しないとダメだと指導しているのでしょうか?

行政手続法という法律があります。
診療所に対して法律の遵守を指導するのであれば、まずは行政機関が行政手続法を遵守すべきです。
つまり、きちんとした根拠をもとに指導すべきです。
どうしても診療所の管理者は診察日全てを出勤しなければならないと指導したいのであれば、昭和29年という既に古文書の域に達しているような通達を根拠とするのではなく、厚生労働省に「診療所の管理者が週4日しか勤務していない場合、管理者として不的確か?」という照会すべきです。

ちなみに某市の最終的な回答は管理者の常勤はあくまで個別に判断するので、診療日全てに勤務していないからといって直ちに管理者として不的確とは言えない」という曖昧な回答でした。

(補足説明日 平成23年11月10日)

いまだに診療所の管理者は診察時間中はずっといなければならないと指導している保健所があるらしいので、平成28年8月に経営ヒント「診療所の管理者要件は「常勤」であり「専従」ではない」
https://nishioka-office.jp/kaitou89.html)を公開しました。
こちらもご参照下さい。

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