質問「医療法人の決算書類に株主資本等変動計算書は必要なのか?」

ご質問は医療法人を運営している病院から頂きました。
平成18年5月の新会社法施行に伴い、従来の利益処分計算書から株主資本等変動計算書に決算書類を変えて申告していたところ、顧問税理士から「医療法人は株式会社ではないので株主資本等変動計算書を添付するのはおかしい」と指摘されたので、従来の利益処分計算書に戻しました。
ところが、銀行に融資を申し込んだ際に銀行から株式資本等変動計算書の提出を求められ、かなり戸惑っているので、医療法人は株主資本等変動計算書が必要なのかどうか教えて欲しいという内容でした。

確かに株主資本等変動計算書は平成18年5月に施行された新会社法で株式会社が作成を義務付けられた計算書類ですが、結論を先に書くと医療法人でも株主資本等変動計算書の作成が必要な場合があります。
株主資本等変動計算書が必要かどうかの判断は医療法人がどの会計基準に従って決算書類を作成しているかによります。
したがって、株式会社ではないので必要ないという判断は間違っています。

医療法人の会計は医療法第50条の2に「医療法人の会計は、一般に公正妥当と認められる会計の慣行に従うものとする。」と定められているように、どの会計基準を使わなければならないと決められていません。
医療法人が使うのに妥当と考えられる会計基準の例をあげると、病院会計準則や企業会計基準などがありますが、ほとんどの医療法人は病院会計準則に従って決算書類を作成していません。
自院が病院会計準則に従って決算書類を作っているかどうかは損益計算書を見ればわかります。病院会計準則に従っているのであれば損益計算書は次のような表示になっていなければなりません。
    Ⅰ 医業収益
    Ⅱ 医業費用
      1 材料費
      2 給与費
      3 委託費
      4 設備関係費
      5 研究研修費
      6 経費
      7 控除対象外消費税等負担額
      8 本部費配賦額
    Ⅲ 医業外収益
    Ⅳ 医業外費用
もし、自院の決算書類が上記のような損益計算書になっているのであれば、その医療法人は株主資本等変動計算書は必要ありません。
病院会計準則で定められている決算書類(財務諸表)は貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書及び附属明細表だけだからです。(利益処分計算書も必要とされていません。平成16年の病院会計準則の見直し時に廃止されました。)

ところがほとんどの医療法人の損益計算書には販売費及び一般管理費という区分があると思います。
これはその医療法人が企業会計基準に従って決算書類を作成していることを示しています。
企業会計基準では株式資本等変動計算書は必要な書類とされているので、企業会計基準に従って決算書類を作成している医療法人は株主資本等変動計算書が必要です。
どうしても株主資本等という文字が気になるという方は社員資本等変動計算書とタイトルを変更して下さい。
ちなみに最近銀行で融資を受ける際に「中小企業会計基準適用に関するチェックリスト」があれば融資を受けられやすくなるとか、利率が下がることがあります。
しかし、中小企業会計基準は企業会計基準の中小企業版ですので、当然株主資本等変動計算書は必要であり、病院会計準則に従って決算書類を作っている医療法人はこの制度が利用できません。

(公開日 平成20年7月1日)