質問「クリニックで医療事故が発生した場合、報告義務はありますか?」

ご質問は当事務所の顧問先様から頂きましたが、他の医療機関の方にも参考になると思ってホームページに公開します。

医療事故の報告義務について医療法及び医療法施行規則では下記のように定めています。

【医療法第十六条の三】
特定機能病院の管理者は、厚生労働省令の定めるところにより、次に掲げる事項を行わなければならない。
一~六 省略
七  その他厚生労働省令で定める事項

【医療法施行規則第九条の二十三】
法第十六条の三第一項第七号 に規定する厚生労働省令で定める事項は、次のとおりとする。
一 省略
二 次に掲げる医療機関内における事故その他の報告を求める事案(以下「事故等事案」という。)が発生した場合には、当該事案が発生した日から二週間以内に、次に掲げる事項を記載した当該事案に関する報告書(以下「事故等報告書」という。)を作成すること。  以下省略

【医療法施行規則第十一条】
第九条の二十三第一項第二号の規定は、次に掲げる病院であつて特定機能病院でないもの(以下「事故等報告病院」という。)の管理者について、準用する。
一 国立ハンセン病療養所
二 独立行政法人国立病院機構、独立行政法人国立がん研究センター、独立行政法人国立循環器病研究センター、独立行政法人国立精神・神経医療研究センター、独立行政法人国立国際医療研究センター、独立行政法人国立成育医療研究センター及び独立行政法人国立長寿医療研究センターの開設する病院
三 学校教育法に基づく大学の附属施設である病院

したがって、一般病院やクリニックには医療事故の報告義務はありません。

ところで、よく医療事故が発生したら保健所に報告しなければならないと聞くと思いますが、実は保健所へ報告するという法的根拠は全くありません。
例えば日本医師会が作成した「医療従事者のための医療安全対策マニュアル」にも医療機関内における事故報告は義務だと書かれていますが、全ての医療機関が外部(院外)への報告義務があるとは書かれていません。
医療機関内への報告義務がある理由は医療法及び医療法施行規則で下記のように定められているからです。

【医療法第六条の十】
病院、診療所又は助産所の管理者は、厚生労働省令で定めるところにより、医療の安全を確保するための指針の策定、従業者に対する研修の実施その他の当該病院、診療所又は助産所における医療の安全を確保するための措置を講じなければならない。

【医療法施行規則第一条の十一】
  病院等の管理者は、法第六条の十の規定に基づき、次に掲げる安全管理のための体制を確保しなければならない。
一 医療に係る安全管理のための指針を整備すること。
二 医療に係る安全管理のための委員会を開催すること。
三 医療に係る安全管理のための職員研修を実施すること。
四 医療機関内における事故報告等の医療に係る安全の確保を目的とした改善のための方策を講ずること。

このため無床診療所を含む全ての全ての医療機関は医療安全管理指針(マニュアル)を作成する義務があります。
この指針(マニュアル)の中に医療事故が発生した場合の報告についても規定されており、一般的には有床診療所であれば院内に設けられた医療安全管理委員会、無床診療所であれば院長に報告すると書かれています。
また、東京都の病院経営本部が作成した医療事故予防マニュアル「医療事故が起きたら」にも、「過失の存在が確実である場合はもとより、過失が疑われる場合もしくは、患者側からの不信が強い場合には、「事故調査会」の調査を基に院長が判断し、病院経営本部へ報告をする。」と書かれていますが、保健所とは書かれていません。
さらに報告義務がある特定機能病院等であっても登録分析機関(現在は、公益財団法人日本医療機能評価機構)に報告することになっています。

要するに法令には保健所へ報告とは一言も書かれていません。

ただし、マニュアルに医療事故が発生した場合は保健所や県の担当課に報告すると書いている医療機関であれば、マニュアルに従って保健所や県の担当課にも報告して下さい。

最後に患者が死亡または重篤な傷害が発生した場合は所轄警察署への届出が必要となります。異状死などはマニュアルにどう書かれているかは関係ありません。

(公開日 平成26年1月31日)