経営ヒント「医療法人定款変更認可申請書に添付する収支予算書の前年度繰越金」

平成27年8月17日に開催された医業経営研鑽会の事例研究会で「東京都から定款変更認可書に添付する収支予算書の前年度繰越金の金額は事業報告等提出書(いわゆる医療法人決算届、以後「医療法人決算届」と書きます)の貸借対照表の繰越利益剰余金の金額を記載すること」と指導されたという報告がありましたが、この指導は間違っています。
この指導をした人は損益計算書と収支予算書の違いを全然理解していません。

医療法人決算届は損益をベースにした様式になっています。
ですから損益計算書という様式になっていますし、貸借対照表の有形固定資産は減価償却資産の未償却残高を記載します。

これに対し、収支予算書は収支をベースにした様式になっています。
ですから収支予算書には施設整備費として固定資産の購入額などを記載しますし、借入金も元利返済額を記載します。
しかし、収支をベースにするので減価償却費は記載しません。

損益計算書は損益(利益)を計算する為の帳票です。
収支予算書は収支(お金の増減)を計算する為の帳票です。
2つの様式は似ていても性格は全く異なります。

収支予算書は収支(お金の増減)を計算する帳票なので、前年度繰越金は期首現預金残高が正しいです。
医療法人決算届の貸借対照表だと「現金及び預金」になります。

行政の指導が正しいとは限らない好例です。
皆さまも行政の指導を鵜呑みにせず、正しいかどうかご自身で考えることを強くお勧めします。

なお、前年度の医療法人決算届が出ていないと収支予算書の作成が出来ないと思い込んでいる方がいるようですが、これも間違いです。
現預金残高は医療法人決算届の提出がなくてもすぐにわかるはずです。
さらに、診療所の医療法人決算届には「現金及び預金」も「繰越利益剰余金」もないので医療法人決算届の提出の有無は収支予算書の作成とは全くの無関係です。
他人に指導する立場にある方は最低限の会計知識は持って欲しいものです。

(公開日 平成27年8月28日)