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経営ヒント「東京都に提出する医療法人役員変更届に添付する辞任届に実印押印は必須か?」

東京都は「医療法人運営の手引き」で医療法人役員変更届に添付する辞任届には「押印は実印による。」としています。
なお、東京都は監事監査報告書も同様に「監事の個人の実印を押印する。」としています。

結論を先に書くと辞任届や監事監査報告書への実印押印に法的根拠は一切無く、東京都は実印押印をお願いしているだけです。
東京都の医療法施行細則にすら実印押印が必要とはひと言も書かれていません。

しかし、東京都は諸々の事情があって実印以外で押印した辞任届や監事監査報告書を提出した場合であっても必ず実印を押印していなと連絡がきます。
実印押印ができない理由を説明すると「次からは実印でお願いします」とする職員もいますが、なかには強硬に実印押印を求めてくる職員がいます。

そこで私は東京都福祉保健局医療政策部医療安全課に対して
医療法人役員変更届に添付する辞任届への押印は実印が必須かどうか教えて下さい。必須であればその法的根拠を示してください。
という質問書を令和3年8月25日付で送りました。

それに対する回答書が令和3年9月7日付で届きましたが、その回答は
都では、役員変更届様式は医療法施行細則第41条に定めており、その添付書類は、①役員名簿、②役員改選を行った会議(社員総会、理事会、評議員会)の議事録、③新たな役職に就任した役員の履歴書、役員就任承諾書、印鑑登録証明書、④任期途中で辞任した役員の辞任届としています。また、それら添付書類の様式は、「医療法人運営の手引き」に示しているとおりです。
辞任届への押印については、役員就任や辞任は地位の得喪にかかる重要な行為であることから、その様式の注釈にあるとおり実印としています。

でした。

ある程度予想はしていましたが、私の質問に全然答えていません。
まず、実印押印は必須かどうか答えていません。
次に、実印押印の法的根拠もまったく答えていません。
要するに医療法人運営の手引きに書いてあることと同じことを書いているだけです。

これは東京都は実印押印は必須と書けないし、実印押印の法的根拠も書けないということです。
つまり、私が主張しているように実印押印はあくまで東京都からのお願いということです。

お願いである以上、実印押印の指導を拒んだ場合に執拗に実印押印を要求してくるのは東京都行政手続条例に反しています。

東京都行政手続条例は第1条で「この条例は、処分、行政指導及び届出に関する手続に関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性(行政上の意思決定について、その内容及び過程が都民にとって明らかであることをいう。)の向上を図り、もって都民の権利利益の保護に資することを目的とする。」と定めているように、届出の手続に関しも行政上の意思決定について、その内容及び過程が都民にとって明らかにする必要があります。
次に東京都行政手続条例第30条で「行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、いやしくも当該都の機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならないこと及び行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意しなければならない。」と行政指導は相手方の任意の協力によってのみ実現と明記されています。
さらに東京都行政手続条例第33条第3項で「行政指導が口頭でされた場合において、その相手方から前二項に規定する事項を記載した書面の交付を求められたときは、当該行政指導に携わる者は、行政上特別の支障がない限り、これを交付しなければならない。」と定めています。
しかし、東京都の職員は私が実印を押印しろという指導根拠の提示をお願いしても示さず、実印押印はあくまで東京都のお願いであり従う必要はないと回答しても執拗に実印押印が必要を繰り返すばかりです。
「相手方の任意の協力によってのみ実現」は完全に絵に描いた餅であり、東京都行政手続条例は全然守られていません。

いやしくも都民に対して行政指導をする者は嘱託職員があるかどうかを問わず、東京都行政手続条例を遵守する必要があります。

また、東京都の回答書は「役員変更届様式は医療法施行細則第41条に定めており」と書いてあり、素人が読むとあたかも法律で定められていると誤認する書き方をしています。
しかし、医療法施行細則第41条は「令第五条の十三の規定による役員の変更の届出は、別記第五十四号様式による」としか書かれておらず、実印が必要とはひと言も書かれていません。
このように東京都は医療法施行細則を根拠として見せかけているだけです。

以上、説明した通り、辞任届や監事監査報告書への実印押印はあくまで東京都からのお願いであり、強制する根拠は一切ありません。
東京都はこの事実をちゃんと認め、医療法人運営の手引きには「原則として実印を使用してください。」と書くべきです。

なお私は東京都への質問書にも書きましたが、東京都からのお願いであると認識したうえで、辞任届や監査報告書には実印を押印して提出しており、東京都の手続きが円滑にいくよう協力しています。
ただ、諸々の事情があって実印押印が困難がケースがあることも事実なので、その時だけ実印以外を押印しているだけということを申し添えておきます。

(公開日 令和3年9月22日)

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