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質問「自由診療(自費診療)に関する患者紹介料について」

保険医療機関で自由診療を行っているクリニックから、自由診療の患者を紹介され時に、紹介者に手数料を支払うことは療養担当規則に違反するのかどうか質問がありました。
弁護士に相談したところ、保険医療機関は例え自由診療であっても紹介手数料を支払うと療養担当規則に違反すると言われたそうです。
なお、その弁護士は保険医療機関でなければ何の問題もないとも言っていたそうです。

結論を先に書くとその弁護士は間違っています。
療養担当規則が何の規則なのか理解していないものと思われます。

療養担当規則第2条の4の2(経済上の利益の提供による誘引の禁止)
※以下、アンダーラインは当事務所
保険医療機関は、患者に対して、第五条の規定により受領する費用の額に応じて当該保険医療機関が行う収益業務に係る物品の対価の額の値引きをすることその他の健康保険事業の健全な運営を損なうおそれのある経済上の利益の提供により、当該患者が自己の保険医療機関において診療を受けるように誘引してはならない。
2 保険医療機関は、事業者又はその従業員に対して、患者を紹介する対価として金品を提供することその他の健康保険事業の健全な運営を損なうおそれのある経済上の利益を提供することにより、患者が自己の保険医療機関において診療を受けるように誘引してはならない。

療養担当規則第2条の4の2の第1項は保険診療に関する値引きを禁止していますが、自由診療は関係ありません。第五条の規定とは保険診療の一部負担金のことだからです。
また、健康保険事業の健全な運営とは保険診療のことを指しています。

患者紹介料について定めているのは療養担当規則第2条の4の2の第2項です。
わかりやすくするためにアンダーラインだけを読むと「保険医療機関は、事業者又はその従業員に対して、患者を紹介する対価として金品を提供することにより、診療を受けるように誘因してはならない。」となり、これだけ読むと保険医療機関は自由診療であっても患者紹介料を支払ってはならないと読み取れます。

しかし、そもそも療養担当規則は健康保険法第70条と第72条に定める厚生労働省令のことです。

健康保険法第70条(保険医療機関又は保険薬局の責務)
保険医療機関又は保険薬局は、当該保険医療機関において診療に従事する保険医又は当該保険薬局において調剤に従事する保険薬剤師に、第七十二条第一項の厚生労働省令で定めるところにより、診療又は調剤に当たらせるほか、厚生労働省令で定めるところにより、療養の給付を担当しなければならない

健康保険法第72条(保険医又は保険薬剤師の責務)
保険医療機関において診療に従事する保険医又は保険薬局において調剤に従事する保険薬剤師は、厚生労働省令で定めるところにより、健康保険の診療又は調剤に当たらなければならない。

ここもわかりやすくするためにアンダーラインだけを読むと第70条は「保険医療機関又は保険薬局は、厚生労働省令で定めるところにより、療養の給付を担当しなければならない。」となり、第72条は「保険医療機関において診療に従事する保険医又は保険薬剤師は、厚生労働省令で定めるところにより、健康保険の診療又は調剤に当たらなければならない。」となります。
療養の給付とは保険診療のことです。自由診療は含まれていません。

さらにわかりやすく書き替えると第70条は「療養担当規則に定めるところにより、保険診療を担当しなければならない。」となり、第72条は「療養担当規則に定めるところにより、健康保険の診療又は調剤に当たらなければならない。」となります。

つまり、そもそも療養担当規則は保険診療に関するルールです。
保険診療に関するルールを定めている以上、療養担当規則第2条の4の2の第2項は自由診療には無関係です。

(公開日 令和元年10月7日)

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