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質問「中小一般病院が生き残っていく為の経営戦略について」

ご質問は都市部にある約100床の一般病院からで、現在は10対1入院基本料を算定し、地域の急性期医療を担っていると自負しているが、将来に対して不安があり、今後どのような経営戦略を立て、生き残っていくべきか?というものでした。

ご質問をしてきた病院は当事務所から比較的近いということもあり、実際に訪問してご相談を受けてきましたが、まず入院患者のうち内科系の患者(そのほとんどが高齢者)が半分以上を占めており、外来患者に占める高齢者の割合もかなり高いことがわかりました。
また、外来の診療科目も一般内科、外科、耳鼻科、皮膚科、整形外科など10科目程度あり、それらの診療科目を維持するためにかなり多くの非常勤医師がいることもわかりました。
ご質問者の病院の特徴をまとめると、近隣クリニックと競合している診療科目が多く、高齢患者が入院・外来共に多いという点があります。

ご存じのように平成20年4月から後期高齢者医療制度がスタートします。後期高齢者医療制度は後期高齢者のフリーアクセスがある程度制限される可能性があります。まだ後期高齢者医療制度の詳細は不明ですが、どうも後期高齢者の外来を担うのは診療所であり、病院は基本的に後期高齢者の外来を受け付けられなくなりそうです。
また、在宅療養支援診療所も「重症型」と「軽症型」に分けられ、末期がん患者・人工呼吸器・経管栄養・中心静脈等を行っている在宅患者は「重症型」在宅療養支援診療所が担うことになりそうです。
後期高齢者の入院については治療後の生活を見越した高齢者評価とマネジメントが導入される可能性があります。このようなマネジメントが導入されるということは長期入院になりがちな後期高齢者の早期退院を促進するのが目的と思われます。例えば入院基本料を低く設定する変わりに高いマネジメント加算を設定することが考えられます。
つまり、医療から介護(または在宅)という地域連携が出来ていない病院は平成20年4月以降、入院収入が減ることを意味しています。これを避けるためには地域連携を強化するしかありません。

さらに、平成19年4月から段階的に都道府県による医療機能情報公表制度がスタートします。これにより集中治療室(ICU)や冠疾患専用集中治療室(CCU)などの有無や、日帰り手術や1泊2日入院手術などの短期滞在手術の実施の有無などが、病院が望まなくても公表されます。
こうなると、単なる手術室しか持たない病院は、手術設備が整った急性期病院に比べ不利になりますし、短期滞在手術をしていない病院も不利になります。
医療機能情報公表制度は患者に及ぼす影響が少ないと考えている人もいるようですが、既に最近の新聞に病院が選べるという記事が出始めています。恐らく数ヶ月後には病院選びのハウツー(How to)本が出版されるなど、選ばれる病院と選ばれない病院の差がかなり出てくるのではないかと私は考えています。

このように中小一般病院が急性期医療を担っていくのはかなり難しい状況です。
したがって、中小一般病院が生き残っていくためには次のような戦略があると思います。
1.内視鏡などの短期滞在手術に力をいれる。
2.近隣クリニックや病院が行っていない専門外来をはじめる。
3.来るべき後期高齢者の急性期入院医療に備えるため、地域の介護保険施設や重症患者を診られる在宅療養支援診療所と連携を図り、後方支援施設を確保する。
4.近くの急性期病院の退院受け入れ病院として回復期リハや、慢性疾患による中・長期入院治療を行う。
5.どうしても入院・外来ともに高齢患者が多い場合は、思い切って病床数を19床にダウンサイジングし、在宅療養支援診療所になることで地域の高齢者医療を担う。

いずれも言うは易し、行うは難しですが、クリニックと競合する診療科目を多く持ち、入院・外来患者も高齢者が多い病院は、何らかの対策を取らないと、生き残りが難しくなってきます。

(公開日 平成19年2月26日)

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