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経営ヒント「介護老人保健施設の診察室に診療所開設許可申請は必要ない」

平成20年9月に神奈川県H市の介護老人保健施設に対して実地指導が行われましたが、その際にH市保健福祉事務所の職員から介護老人保健施設の診察室は診療所に該当するので速やかに診療所開設許可申請をするよう指導されました。
当事務所が介護老人保健施設の診察室は診療所には該当しないので診療所開設許可申請は必要ないと答えたところ、H市では全ての介護老人保健施設に診療所開設許可申請をするよう指導していると言ってきました。
しかし、介護老人保健施設の診察室は以下の理由から診療所には該当しません。

医療法第1条の5第2項に診療所とは、「医師又は歯科医師が、公衆又は特定多数人のため医業又は歯科医業を行う場所であつて、患者を入院させるための施設を有しないもの又は19人以下の患者を入院させるための施設を有するものをいう。」と定められています。
介護老人保健施設の診察室は入所者についてのみ診察を行う場所であり、特定多数人のために医業を行う場所には該当しないと思われます。
しかし、医療法には特定多数人の定義は書かれていないので、これだけでは介護老人保健施設の診察室が診療所に該当しない理由にはやや説得力に欠けます。

ところが、厚生労働省が平成19年7月30日に各都道府県宛に出した「病院又は診療所と介護老人保健施設等との併設等について」という通知には次のように書かれています。

(1) 病院又は診療所と介護老人保健施設等との区分について
病院又は診療所と介護老人保健施設等とを併設する場合には、患者等に対する治療、介護その他のサービスに支障がないよう、表示等により病院又は診療所と介護老人保健施設等との区分を可能な限り明確にすること。
(2) 病院又は診療所に係る施設及び構造設備と介護老人保健施設等に係る施設及び設備との共用について
①病院又は診療所に係る施設及び構造設備と介護老人保健施設等に係る施設及び設備は、それぞれの基準を満たし、かつ、各施設等の患者等に対する治療、介護その他のサービスに支障がない場合に限り、共用が認められること。ただし、この場合にあっても、各施設等を管理する者を明確にしなければならないこと。また、次に掲げる施設等の共用は、認められないこと。
・ 病院又は診療所の診察室と介護老人保健施設等の診察室又は医務室
・ 手術室
・ 処置室(機能訓練室を除く。)
・ 病院又は診療所の病室と介護老人保健施設等の療養室又は居室
・ エックス線装置等

上記通達には診療所の診察室と介護老人保健施設の診察室又は医務室との共用は認められないと明記されています。
診療所開設許可申請を行うということは介護老人保健施設の診察室を診療所にすることであり、一つの診察室を診療所と介護老人保健施設で共用することになるので上記通達に反します。

H市保健福祉事務所の職員は診療所開設許可申請が必要かどうかの判断は保健福祉事務所がすると言っていましたが、これも間違いです。
申請が必要かどうかは法令及び通達から判断するのが正しいのであり、H市保健福祉事務所の指導は行政手続法に違反する行政指導に該当します。
今までH市の介護老人保健施設が診療所開設許可申請をしているのが事実であっても、前例にとらわれて間違った指導をただ聞き入れるのではなく、その指導が本当に適切かどうかを常に判断して頂きたいと思います。

(公開日 平成21年12月24日)

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